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稲川淳二の怪談ナイト Mystery Tour 2023

ブログでは塾と関係のないことのみを書いています。

本当にたいしたことは書かないので 御用とお急ぎでない方、

特に、お暇で気が向いた方にお読みいただければ幸いと書く次第です。

 

行ってみたいなと思いつつも、なかなかその機会に恵まれず、

結局行けてないところってありませんか?

 

私にはあります。

いや、ありました。

 

毎年夏開催、稲川淳二の怪談ライブがそれでした。

この夏、長年の念願叶って初めて行ってきました。

 

怪談ライブというくらいですから、毎年夏開催です。

大人気なので全国ツアーです。

夏といえば私は夏期講習なので、自分の予定と怪談ライブの予定を見ては、

「はあ、今年も行けないか…」と、そんな年を何年も過ごしました。

 

今年は運よく、私の休みの日に東京公演がありました。

東京は中野zeroホール。この機会を逃すまいと行ってきました。

宿願成就。とても楽しい時間でした。

 

そんなわけで、本日は夏らしく怪談ライブのお話を。

残暑厳しい今日この頃ではありますが、皆様方におかれましては、

今日も今日とて、よろしくお付き合いのほどをお願い申し上げる次第でございます。

 

私は、怪談好きではあるのですが、

見えちゃったり、聞こえちゃったりする人ではないです。

UFOに連れ去られたこともありませんし、

異世界の駅に下車してしまったこともありません。

怪しいことにはごく懐疑的なつまらない人間です。

 

私が怪談好きというのは、

話芸、特に一人喋りの話芸として、怪談が好きなのです。

 

稲川淳二というひとは、革命的な怪談の語り手です。

稲川淳二以前の怪談は、講釈師のように講談調で語るのが王道でした。

 

講釈師が、明瞭な活舌とよく通る声で、

立て板に水のごとく、よどみなくストーリーを語り、

そして、クライマックスの怖い場面では、

一段と低い声でゆっくり話して怖がらせました。

低い声でゆっくり話す、これが怖い場面の合図でした。

 

稲川淳二はちがいます。

もともと江戸っ子で早口なので、そもそも聞き取りづらいところがあります。

慣れれば大丈夫なのですが、初めての人には聞き取りづらいです。

BBゴローに真似されてしまうところです。

そして、クライマックス。最も怖い場面で、さらに早口になります。

早口すぎて一番怖い場面で何が起きたのかわかりづらかったりするくらいです。

でもそれが怖いんです。登場人物の焦りや驚きが伝わります。

 

「怖いときに落ち着いてる人なんていないでしょ?」という旧来の怪談(の語り方)の否定です。

「怖かったらあせるでしょ」が稲川淳二が広めた新しい怪談語りのフォーマットです。

リアクション芸で一世を風靡したタレント時代に培われた表現力です。

「怖いなあ」「悲惨だなあ」を伝える能力は抜群です。

 

現在巷に流布する怪談は稲川流モダン話法が主流でありましょう。

怪談を聞いて、クライマックスでゆっくり低い声で話したらクラッシック怪談話法、

一番怖い場面で早口で大きな声になったらモダン怪談話法と分類できましょう。

偉大なるモダン怪談話法の創始者。それが稲川淳二なのであります。

 

稲川淳二の怪談には批判もあります。

曰く、「稲川の怪談は作家が書いた作り話だ」の類です。

本人もライブの宣伝でメディアに出たとき

「ネタに困っているから、怖い話を5000円で買っている」

などと言って笑いのネタにしているので、全てが実話でないことは確かです。

 

しかし、私は全く気になりません。

30年以上も毎年全国ツアーでライブで話しているのです。

そりゃ実体験だけで続きはしません。作家がいて当然。フィクションで当然です。

 

そこはどうでもいいんです。

話を聞いて怖いかどうか、そこだけが大事なところです。

何なら、作り話で怖がらせるほうがより高度な話術と言えもしましょう。

私が楽しみリスペクトするのはそこです。

 

さて、念願のライブ会場へ到着しました。

平日にもかかわらず1300人収容の会場はほぼ満席です。

年齢層も幅広く、小さい人からご年配まで、ご家族連れもちらほらみえます。

 

始まる前から驚きました。集客力がすごい。

イケメンも美女も出てきません。齢76歳のおじいさんが一人出てくるだけです。

歌も踊りも芝居もありません。ただ怖い話をするだけです。

それでこの集客。

これを夏が来るたび30年も続けている。すごいことです。

 

開演しました。

終演時間は聞いていなかったので、60分くらいで終わるかな?と思っていました。

怖い話をするだけですからね。

如何な名人芸とはいえ1時間も聞いたらお腹いっぱいでしょう。

 

長くても休憩時間とって90分が限界かな?

それとも幕間に誰か出てきて、トークコーナーとかやるのかな?

初めてなんで、そんなことを思っての開演でした。

 

結果から言えば2時間30分。150分休憩なしでした。

他の出演者なし。稲川淳二がただ一人、怖い話をする。

ただそれだけで2時間半でした。

 

退屈はしませんでした。

論破王のひろゆき氏にいわれるまでもなく、これって私の感想ですが、

おそらくお集りの千人余りの皆さんも同じ感想だったと思います。

だから毎回大勢お集りなのでしょう。

30年も続いているのがなによりの証左でありましょう。

 

話の数でいえば十数本の怪談を聴きました。

いずれも大仰な演出はありません。

大きな音や派手な照明などなく、ただただ怪談を聴きます。

 

話と話の間、つなぎのトークで緊張しすぎた空気を少し和ませたり、

ときにハードな怪談を、またときにソフトな怪談を、

バリエーション豊かに色々な怪談を聴かせてくれました。

 

なにせ相手は1000人。老若男女取り混ぜて雑多な観客です。

そんな観客を満足させる、「誰にとっても心地よい怖さ」という、

やや語義矛盾をきたした不思議で絶妙な怖さ加減の話の数々でした。

 

「怖い話を楽しんでください」と稲川は言います。

なんだか矛盾した言葉のようですが、

言葉通りの150分を過ごした私には、この言葉がすっと腹に落ちます。

 

人を評して「座持ちが良い人」といったりしますが、

稲川淳二ほど座持ちが良い人もおりますまい。

150分、一人で喋るだけで場を持たせる。

なかなかできることではありません。

まして1000人からの老若男女を満足させる。

これは途轍もない座持ちの良さです。

 

もしかしたら、稲川よりも、もっと怖い話をする人はいるかもしれません。

しかし、稲川淳二ほど怖い話で楽しませてくれる人はいないだろうな。

と、そんなことを思った次第であります。

 

毎度、駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

また、お暇のおりにお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします。

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