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「安定した」職場へ就職希望

ブログでは塾と関係のないことのみを書いています。

本当にたいしたことは書かないので 御用とお急ぎでない方、

特に、お暇で気が向いた方にお読みいただければ幸いと書く次第です。

 

談志がよく語っていたマクラです。

 

エジプト文明の研究を専門とする、とある考古学者、

ピラミッドに刻まれている、いたずら書きのような文章みつけた。

何か大変な発見につながるかもしれないと、

何年もかけてこの文章を研究し、解読に成功した。

その結果、

それはこういう意味だとわかった。

「まったく、最近の若い者ときたら・・・」

 

いつの世も、世代間の埋めがたいずれというものはあるようです。

いわゆるジェネレーションギャップ、最近ではジェネギャなどと略して言ったりしますが、

昨日今日に始まったことではないようです。

 

本日は最近読んだ本から、お薦めの一冊を。

金間大介著、「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」です。

 

現役で教鞭をとる大学教授が「今の若者たち」は押し並べて「いい子症候群」であると説いた本です。

 

「最近の若い者ときたら・・・」とお嘆きの大人の方には、若者のことがよくわかる、

「老害さんには困ったものだ・・・」と困惑の若い人には、世の大人のことがよくわかる良書です。

 

孫子の兵法に曰く、「彼を知り、己を知れば百戦危うからず」と申します。

若者(大人)とは何者か?また、若者(大人)からどう見られているのか?

現代を生きるあらゆる世代にとって有用な情報でありましょう。

 

文体も軽妙洒脱で、「あ~、そういう人いるなあ」と笑っているうちにすらすらと読めます。

読書が苦手な方にもおすすめです。

秋の夜長に是非。

 

さて、私の感想です。

 

本書に曰く、

若い人は「安定した」職場への就職を望んでいるといいます。

 

10年ほど前から、就職先に希望することランキングで「安定」が堂々の第1位を続けているそうです。

若い人の安定志向、わかる気がします。

 

では、10年前、「安定」は何を抜かして第1位に躍り出たのでしょう?

抜かされた10年前までの第1位、

10年前までの若い人たちが一番大切にしていたものです。

「安定」に抜かされ、現在第2位に甘んじることになったものとは?

 

それは、「自分の能力(特技)を活かせる」です。

 

これも納得。

「自分探し」なんて言葉がひところ流行りました。

最近あまり聞かなくなった気がします。

 

「自分の能力を活かせる」は「自己実現」とも言い換えられましょう。

もう少しくだけて言えば「やりたいことをやる」です。

 

今は「自己実現」「やりたいことをする」よりも、「安定」が優先されるそうです。

 

「本気でやりたいことを見つけなさい」というアドバイスは、

「見つけられそうな人にだけ」にしたほうがよさそうです。

ここを慎重にいかないと、

良かれと思って励ますつもりが、逆に委縮させてしまうかもしれません。

 

さて、私が特に感心したのはここから。

さらなるデータから読み取れる、著者のより深い洞察です。

 

「安定した仕事」と聞いて、私たち大人が思うのは「経済的安定」です。

 

何を当たり前のことをとお思いのご同輩。

お気持ちよくわかります。

 

そりゃそうです。「安定した仕事」とは「安定した収入」のこと。

私たち大人は、親子喧嘩のこんなシーンを容易に思い浮かべられます。

 

息子、西城秀樹が叫びます。

「苦労したって、貧乏したって、俺は好きな音楽でスターになるんだ!」

父親、小林亜星が怒鳴り返します。

「馬鹿な夢はあきらめて、早く『安定』した堅い仕事に就きやがれ!」

亜星のぶん投げた茶碗が秀樹に当たり、これをきっかけに取っ組み合いの大喧嘩が始まる・・・

の「安定」です。「安定した仕事」とは即ち「収入の安定」です。

 

しかし、若者の意図する「安定」とは収入のことだけではないといいます。

若者の意図する「安定」とは「職場の人間関係を含めた安定」をいうのだそうです。

 

すっかり老害さんの私には、衝撃でしたが同時に納得もしました。

そこを心配していたんだと考えると、さまざま合点のいくことが多々思いあたります。

 

若者の求める「安定」とは、

むしろ主に「人間関係の安定」を意味するといいます。

 

それは、転勤や職場の異動が少ないというのは言うに及ばず、

日々の業務でノルマに追い立てられたり、

過度な労働(残業)で自分のこころが削られることがないということを含み、

また、こちらが主で、収入の安定は従。何ならオマケとのこと。

 

さらにさらに、著者は令和の若者の心理に迫ります。

 

現在の若者は「人間関係の安定」を大切にします。

それゆえ「叱られることが大の苦手」であると。

 

叱られるのが好きって人もあまりいないと思いますが、

確かに。打たれ弱いのは最近の若い人の特徴かなと、

ここまでは素直に納得です。

 

しかし、著者はもう一歩踏み込んで言います。

令和の若者は、

「人間関係の安定」が乱されかねないので、

「人前で褒められることすら苦手」と感じていると。

 

本のタイトル「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」は、

著者が大学の授業中に、とある学生の努力を皆の前で褒めたところ、

当の学生に真剣にお願いされショックを受けた言葉だそうです。

 

端的に言えば、

現在の若者にとって「安定」とは、

これ即ち「私の気持ちの安定」に他ならない、ということです。

 

若い人たちは「私の気持ちの安定」を最優先に考えている。

著者の鋭い考察です。

 

私にその視点は欠けていました。

でも、そう考えると思い当たることがたくさんあります。

若い人とのやり取りで「どうしてそうなるのかなあ?」と思った

あれやこれやが、にわかに腑に落ちる気がします。

 

世代論ですから、すべての若者に当てはまるなんて乱暴なことは慎まなければなりませんが、

これまでを省み、これからに活かしたいと思いました。

 

本書は現代の若者の心理を解き明かしますが、

同時に対比として先行世代(老害さん?)の心理も解きます。

若い人にとっては、大人に対する「なぜ?」を解き明かしてもいます。

 

若い人にも、大人にも、よりよい相互理解のために、

とても示唆に富んだ良書です。

 

機会があったらご一読をお勧めします。

 

毎度、駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

また、お暇のおりにお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします。

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