直前のアドバイス
ブログでは塾と関係のないことのみを書いています。
本当にたいしたことは書かないので 御用とお急ぎでない方、
特に、お暇で気が向いた方にお読みいただければ幸いと書く次第です。
本日はとりとめのない思い出話にお付き合いください。
私が高校生の時、受験直前に先生にいただいたアドバイスです。
「ここ数日は、いい人でいなさい」
これが受験直前、最後の授業の締めにいただいたアドバイスでした。
電車で席を譲るとか、ごみ箱からこぼれているごみを拾うとか、
誰かに少し親切にしてみるとか、その程度でいいといいます。
普段は思っていても言わなかった「ありがとう」を言葉にして言ってみるとか、
そんな程度で構わないから、普段より少し「いい人でいなさい」とおっしゃいました。
先生は、なぜそうするべきか、
それがどうして試験結果に好影響をもたらすのかは説明されませんでした。
「ここ数日は、いい人でいなさい」とだけ。
受験前にいただいたアドバイスはたくさんあったと思います。
すぐに、直接試験に役立つような、
「おおなるほど」と膝を打つようなアドバイスもいただきましたが、
折に触れ思い出すのはそんな即効性の高かった言葉ではなく、
なんとも不思議なこの言葉です。
なぜこの言葉を思い出すのかといえば、
これが最も謎のアドバイスだったからです。
理屈っぽい私の悪いところです。
「いい人」でいることと「試験結果が良くなる」ことの因果関係がわからない。
「そんなんで合格するなら苦労しないよ」なんて、
わかったような顔をしていた可愛げのない18歳でした。
でも、先生は妙に達観した顔で、自信に満ちて、
「ここ数日は、いい人でいなさい」とおっしゃっていました。
普段はとても論理的にお話しされる先生が、
なぜかこれだけは断定的に理由も言わずに言い切っていたのが気になっていました。
長年の謎であったわけですが、
自分が、反対に受験生を送り出す側になって、
この言葉の真意に気づきました。
結局、先生に真意をただしたわけではないので、
間違っているかもしれませんが、私の解釈はこうです。
この言葉の真意は、
「落ち着いて、実力を発揮してきてほしい」ということです。
ちょっと説明が要ります。
落ち着いてほしいなら「落ち着け」と一言いえば済みそうなものです。
でもこれ、言ったほうの気が収まるだけで言われたほうはどうでしょう?
「落ち着け」と言われて、落ち着く人もいるでしょうが、実はそんな人は少数です。
そんな人は、もともと大して焦っていなかったのです。
本当に落ち着かなくてそわそわして焦っている人は、
「落ち着け」と言われたくらいで落ち着けません。
なにせ落ち着かなくてそわそわして気が焦ってますから、
普段はすっと胸に落ちる言葉も、聞こえてるだけで入ってこない。
「落ち着け」と声をかけたくなる人には、
「落ち着け」の言葉は届かない。
これが皮肉な真実。
そこで、遠回りですが、
「いい人でいなさい」と言われ、普段よりも少しいいことをする。
そうすれば、普段よりも少しは「気分が良くなる」はず。
さすれば、少しは気持ちが「落ち着く」きっかけになることもあるかも。
と、こういうことなのではと思うわけであります。
つまり
「落ち着く」ために「気分をよくする」ために「いいことをする」
ということなんだと思います。
私の推測ですがそれほど間違ってはいないのではと思います。
いかがでしょうか?
それで、もうひとつ、
「ここ数日は、いい人でいなさい」の偉大なところは、
種明かしをしなかったというところだと思います。
「落ち着け」なんて言われる人は、
たいてい、そんなこと言われなくたって自分から「落ち着き」たいと思っています。
すぐにも落ち着きたい。藁に縋っても落ち着きたいと思っています。
落ち着きたい、落ち着かなきゃと思うあまり落ち着かないのです。
そんな人に種明かしはいけません。
もし「ここ数日は、いい人でいなさい」につづけて
「そうすれば気分が良くなり、少し落ち着くきっかけになるよ」なんて言ってしまったら。
ごみをひとつ拾ってみては、
俺落ち着いたかなあ?
ダメじゃん。全然落ち着かないや。
ちょっとの親切をしてみては、
気分良くなってるかなあ?
ダメだ。もっとすごい親切をしなきゃ。
これでもダメか。これでもか。ああ全然焦りが消えないや。
となること必至です。
なんだかわからないけど、「いいことをしてみた」
自分でも気づかないうちになんとなく「気分が良くなってきた」
気持ちに少し余裕ができて「落ち着いてきた」となるには、
この、「なんだかわからないけど」が肝要。
「なんとなく」「少し」が大切なところだと思います。
大切な試験を前にして、
「ここ数日は、いい人でいなさい」とのお言葉。
私は何年もかかってですが、そんな風に分かったことにしています。
試験に限らず、大切なことを控えたときにはよく、
「ここ数日は、いい人でいなさい」
との深謀遠慮のアドバイスをを思い出します。
毎度、駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
また、お暇のおりにお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします。