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男の子を弁護する

ブログでは塾と関係のないことのみを書いています。

本当にたいしたことは書かないので 御用とお急ぎでない方、

特に、お暇で気が向いた方にお読みいただければ幸いと書く次第です。

 

小さな女の子がおままごとをします。

お母さん役になったり、子供の役になったり。

わざと泣いて見せたり、なぐさめる役をやってみたり。

 

そんな姿を見ると

小さいなりに、大きくなってお母さんになったときの準備をしているのかな?と、微笑ましくなります。

 

ぬいぐるみのような、小さくて、柔らかくて、ふわふわした物を、一生懸命に慈しんでいる様子は、はやくも母性の萌芽すら感じさせます。

 

一方、男の子は、大きくて、硬くて、ガチャガチャした物を、ぶつけたりぶん投げたりして遊んでいます。目的がわかりません。少し心配になります。

 

小さい頃は、同年齢なら女の子の方が精神年齢が高めにみえる、といわれるのも肯けます。

 

男の子は幼いと言われがちです。

この点を少し弁護したいと思います。

男の子も男の子なりに成長を希求しているというお話です。

 

「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメがあります。

完結編が公開で昨今また話題です。

 

エヴァンゲリオンは、大きなくくりでいうと「ロボットアニメ」です。

男の子が大好きなジャンルです。

大きくて、硬くて、ガチャガチャしたおもちゃになります。

 

ちょっとだけくくりを狭くすると「人が乗り込んで操縦するロボット」です。

 

そのくくりの始祖は「マジンガーZ」です。

70年代、デビルマンでおなじみの巨匠、永井豪は主人公の少年、兜甲児(かぶとこうじ)をロボットに乗せて操縦させました。

 

それまでもロボットアニメといえば「鉄腕アトム」「鉄人28号」など沢山ありましたが、「乗り込んで操縦する」という点で画期的でした。

 

「乗り込んで操縦するロボット」というくくりは大ヒットし定番のジャンルになります。

80年代に入り、最もヒットしたのが「機動戦士ガンダム」です。

 

そして、その流れで90年代に「エヴァンゲリオン」登場です。

 

「エヴァ」ファンの方の中には、ガンダム、ましてやマジンガーZなんぞ50年も昔のアニメと一緒にしないでくれとお思いの方もおられましょうが、まあもう少しお付き合い下さい。

 

「人が乗り込んで操縦する」ロボットアニメ、

「マジンガーZ」「ガンダム」「エヴァンゲリオン」実は共通点が3つあります。

乗り込むロボットアニメの必須のフォーマット、鉄の掟を守っています。

 

第一点は、乗り込むのは男の子である、ということ。

第二点は、乗り込むロボットは、その男の子の父(マジンガーZでは祖父)から譲りうけたものであること。

第三点は、ロボットに乗ったからには否応なく敵と戦うこと。

以上の三点です。

 

私は、エヴァンゲリオンはこの鉄の掟をしっかり守った作品だからこそロングヒットになったと思っています。

 

この鉄の掟が意味するものは何でしょう?

偶然の一致でしょうか?

 

男の子にとって、乗り込むロボットとは「大人になったときの自分」のメタファー(隠喩)です。

 

今は小さな自分の体ですが、いつか大きくなることは知っています。毎日、毎年大きくなっていく自分にも気づきます。

男の子の興味は「自分は何ができるのか?」です。

(「どう見られているか?」までは気が回りませんから、その意識の高い女の子よりも幼く見えるのでしょう)

だから男の子は身体能力の優劣に敏感です。スポーツや運動会に取り組む熱意を見るとその違いがよくわかります。

 

男の子は、ロボットに乗り込むことで大人になった自分を仮想するのです。

ロボットに乗れば、将来得られるだろう力を、今得ることができて敵と戦えます。

今の自分よりもずっと大きな敵とです。

 

乗り込むロボットとは「大人になったときの自分」のメタファーなのです。

だから当然、そのロボットは父から、あるいは祖父から譲り受けたものでなければなりません。

「大人になる」と「父のようになる」は生物として近似なのです。

だから、乗り込むのは他のだれでもなく、その息子です。偶然ではなく必然の設定なのです。

これが鉄の掟その1,その2の理由です。

 

鉄の掟その3、乗ったからには否応なく敵と戦うです。

 

敵とは「大人社会での競争」です。男の子にとって「大人社会」は、やがて否応なく参加させられる競争の場です。

自分の力(譲られたロボット)で競争を勝ち抜くことを期待されます。

 

「男の子なんだから…」という言葉は、この競争に参加する「権利」を与え「義務」を課します。

評論家の宇野常寛はかつてこれを男の子への「祝福と呪い」と表現しました。

男の子のビルドゥングスロマン(成長物語)に必ず大きな影響を与える要素です。

フロイトが言うところのエディプスコンプレックスというやつです。

 

「男の子なんだから…」と言う言説のすべてを、「ロボットに乗ったからには戦わなければならない」という状況に例えているのです。

これが鉄の掟その3の理由です。

 

以上が、ヒットした「乗り込むロボットアニメ」の基本のフォーマットです。

 

第一点、乗り込むのは男の子である。

第二点、ロボットは父から譲りうける。

第三点、否応なく戦う。

 

私の考えなので、異論はございましょうが、私はそう考えます。

そんな風に考えると、女の子がぬいぐるみを大事に可愛がるのと、男の子がロボットのおもちゃをぶん投げるのとは、見た目はだいぶちがいますが、等しく「成長し大人になることを希求する」態度だといえますまいか。

牽強付会の誹りは甘んじて受けますが、いかがでしょうか?

 

もう少し話しを広げさせていただけば、

そういうわけで、ロボットに乗り込む主人公達は時代の空気をよく表しています。

 

70年代の兜甲児(マジンガーZ)は、闘いに参加することに躊躇はありませんでした。嬉々として敵を倒しました。痛快です。

戦うこと、即ち「競争としての社会参加」は当たり前のことだったのでしょう。

彼らは長じて日本のビジネスマンとなり、リゲインを飲んで24時間戦い、Japanをas No1にして、バブルを謳歌しました。

 

80年代のアムロ・レイ(ガンダム)は、イヤイヤ参加しました。気持ちは屈折です。

それでもアムロは仲間やライバルや恋人を得て、戦う意義を見つけていきました。

「戦うとは、大切なものを守ることである」との富野由悠季のメッセージが込められました。

女性パイロットが増えていくのも、女性の社会進出と歩を合わせています。

戦うことは当たり前ではなく、戦う理由「社会に出る理由」が必要になった世代なのでしょうか。

彼ら(私たちかな?)は長じて自由な働き方を選びはじめます。

フリーター第一世代、均等法第一世代、デューダ・とらばーゆの転職第一世代です。

 

90年代、エヴァンゲリオンの主人公、碇シンジは、いつまでも戦うことにためらいがありました。気持ち鬱々です。

完結編でもとうとう14歳のままで、延々ためらっていました。

 

ここをどう解釈するかは人それぞれだと思います。

「ニート第一世代じゃん」とか「ゆとり世代はね…」と切って捨ててしまうのは短絡に過ぎると思います。

 

私は、兜甲児君とはいい友達になれると思いますが、

深刻な問題については兜甲児君よりも碇シンジ君とゆっくり話したいと思います。

彼なら話しを聞いてくれそうです。

解決しないかもしれないけど、とにかく聞いてはくれそうです。

それはそれで、現代のいいヤツ像のひとつではないでしょうか。

 

 

閑話休題

おもちゃをぶん投げている男の子の姿から、そこまで考えるか?とのお声が聞こえてきそうですが、

長々と私の妄言にお付き合いいただきありがとうございます。また変なこと言ってるなの巻、なので軽く読み飛ばしてください。

 

私は男の子の弁護をしたかったのです。

「男の子もそれなりに将来のことを考えているのかも?」とも考えていただき、

小さな女の子が、母の慈愛の萌芽を見せておままごとをしているのを微笑ましく見るように、

大きくて、硬くて、ガチャガチャした物を、ぶつけたりぶん投げたりして遊んでいる男の子も微笑ましく見守っていただければと思った次第です。

 

頑張っていることを上手にアピールできる人もいます。同時に苦手な人も。

男の子はこれが苦手な人が多いです。そこで男の子の弁護をしてみました。

 

男女の別なく、

アピールが上手な人は、周りから褒められ、褒められるからさらに頑張るという好循環に入ります。

それはとてもよいことです。

しかし、アピールが下手な人は、周りから褒められません。

私はアピールが下手で努力が評価されていない人に「頑張っているね」と言ってあげたい。

できれば、その努力をちゃんと理解して「面白いことしてるじゃん」と一緒に話をしたいと思っています。

 

そんなことを日々思ううちに浮かんだ妄言のひとつです。妄言ですが、アピール下手で損をしている人のお役に立てればと思い書いた次第です。

 

「男の子ってお馬鹿ね」はおそらく永遠に真実の言葉なのでありましょう。

願わくは、眉間にしわを寄せての言葉でなく、成長を楽しみにする微笑みとともにの言葉であらんことを。

 

 

毎度、駄文にお付き合いいただきありがとうございます。

また、お暇があったらよろしくお願いいたします。

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