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映画 ドライブ・マイカー

ブログでは塾と関係のないことのみを書いています。

本当にたいしたことは書かないので 御用とお急ぎでない方、

特に、お暇で気が向いた方にお読みいただければ幸いと書く次第です。

 

映画「ドライブ・マイカー」がパルムドール受賞とのこと。

私も観ました。いい映画でした。

いったん上映終了していましたが、カンヌ受賞に伴い全国で再び上映中。

配信やDVD販売レンタルが開始後の異例の再上映ですが、上々の集客とのこと。

映画好きの私としては、嬉しいニュースです。

 

ご案内の方も多くいらっしゃると思いますが、

映画「ドライブ・マイカー」は、今最もノーベル文学賞に近い日本人作家、

村上春樹の短編集「女のいない男たち」を原作としています。

 

私は村上春樹のファンでもあるので、この短編集も新刊のときに読みました。

映画とはまたちがった魅力があって、こちらもオススメです。

 

映画「ドライブ・マイカー」がパルム受賞で大ヒットなので、

この映画をきっかけに原作の村上春樹も読んでみようかな、という方もいらっしゃるかもしれません。

村上春樹好きの私としては、この映画をきっかけに村上春樹ファンも増えたらいいなと願っている次第であります。

 

「映画が良かったから、初めてだけど村上春樹を読んでみようかねえ」という方。

是非オススメです。村上春樹、面白いです。

 

いままでも、機会があると村上春樹を多くの方にオススメしてきました。

その経験から申し上げますと、二つのポイントで「好き」と「苦手」の両極端に別れてしまいがちな様です。

 

本日は、私がごときが甚だ僭越ではございますが、

そんな「初めてだけど村上春樹を読んでみようかねえ」の方に、

私の思う「初めての村上春樹、ご注意頂きたい特徴を二つ」というお話しをさせていただき、

一人でも多くの同好の士を得て、ひいては村上春樹、悲願のノーベル文学賞受賞の一助になればとの、

いつもの誇大妄言ではありますが、今日も今日とてよろしく付き合いのほどお願い申し上げます。

 

さて、初めての村上春樹、ご注意頂きたい特徴、まず一つ目です。

村上春樹の小説には、

「『この世のものではないもの』がちょいちょい出てくる」です。

 

見えるはずのないものが見え、聞こえるはずのない声を聞きます。

見えちゃったものは仕方がない、聞こえちゃうものは仕方がないので、それでも普通に話は進みます。

 

亡くなった人も現れれば、

ここにいた人が同日同時刻ちがった場所にいて重大事件を起こしていたってこともあります。

やたらと口の悪い手のひらサイズの小さなオジサンも現われれば、

夜空に月が二つ出ていたりもします。

 

稲川淳二座長の怪談ナイト(毎年夏開催のライブツアー)でも似たような展開があるわけですが、

稲川淳二座長ならきっと「ああ、こりゃいかにも出そうだ・・・こりゃ出るね・・・もう出るよ・・・出たっ!怖っわ!」と怖くて楽しいエンターテイメントにしてくれます。

(稲川淳二の怪談ナイトについてはまたの機会にゆっくりと)

 

しかし、村上春樹はわかりやすい謎解きをしてくれません。

謎の存在はたくさん出てきますが、読者の「なぜ?」に答えません。謎の存在は謎のまま話は進みます。

 

謎の存在はもちろん、何かの隠喩になっていたりいなかったり、

誰かの心象風景の投影であったりなかったりなのですが、正解が明かされることはまずありません。

そもそもないのかもしれません。いや、ま、何かあるんでしょう。

謎の存在の解釈は読者に任されます。

 

多様な解釈ができる謎の存在。これを楽しめるかどうかが、

村上春樹「好き」と「苦手」を分ける一つ目のポイントです。

 

映画「ドライブ・マイカー」では『この世のものではないもの』は出てこなかったので、とても観やすくなってました。

ですが、村上春樹を読むと、謎の存在、たいてい出てきます。

謎の解釈、自由です。正解も不正解もありません。

自分なりの解釈ができたらすればいいし、できなくてもかまいません。

村上春樹をお読みになる際は「謎は謎のままでもよいのだ」とお心得いただいてお楽しみください。

 

さて、続きまして、

初めての村上春樹、ご注意頂きたい特徴、二つ目です。

それは、「すべての伏線が回収されるわけではない」です。

 

ミステリーなどではここが見せどこ、読ませどころです。

「名探偵コナン」でも「カメラを止めるな」でも「コンフィデンスマンJP」等々でも、

ラストで伏線の回収がバチッと決まるカタルシスが魅力です。

 

話の途中で、ちょっと不思議な展開になっても大丈夫。安心して不思議で不安な気分を楽しめます。

なぜなら、最後には必ず、あれもこれもそれもどれも、すべてがひとつに繋がり、

それら全てが見事な伏線となっていたことがわかり大団円を迎えること間違いなし、

「ああ、そうだったんだ!なるほどねえ。」と必ずなるからです。

 

ですが、村上春樹は伏線を回収しないことがちょいちょいあります。

 

といって、それは伏線を張らずストレートに話を進めるということではありません。

 

むしろ、しょっちゅう伏線っぽい展開になるし、いかにも伏線でしょってエピソードが入ります。

こんなの後で回収してくれなかったらモヤモヤするじゃん、ってのを回収せずに終わることが多々あります。

 

まあ、まったく伏線回収しないわけではありません。時々します。でもそれも親切じゃない。

「考えようによっては、こうも考えられる・・・人もいるかも」という程度のものばかりです。

ゆえに感想も感動も人それぞれ。みんな揃って同じカタルシスを感じるというわけではありません。

誰もが納得の説明を鮮やかにしてくれる「江戸川コナン君」はいつまで待っても出てきません。

 

でも、これが良いところ。楽しいところなんです。

「コナン君」が出てこないので、ひとつの作品に読者の数だけの解釈が生まれる余地があります。

してみると、そこに生まれるのは「私なりの感動と感想」「私だけの感動と感想」です。

好きな人はこれが好き。

 

伏線とも考えられることは沢山張られっぱなし。でありながら、必ずしも安心の伏線回収は用意されていない。

それが村上春樹の特徴二つ目です。

 

いかがでしょう?そんなところを予備知識にして、

「初めてだけど村上春樹を読んでみようかねえ」の方。是非ご一読をオススメします。

 

まあ、「好き」も「苦手」も読んでみなければわかりません。

大丈夫です。私の老婆心の駄文はお耳汚しでしたが、村上春樹作品はどれももれなく一級品です。

ノーベル文学賞候補常連は伊達じゃありません。

私の趣味の中では珍しく同好の士が多い趣味です。世界中にいるといえましょう。

ご安心いただいて「初めての村上春樹」楽しんでください。

 

最後に蛇足情報をおひとつ、

最新長編「騎士団長殺し」は舞台がガッツリ地元小田原です。

小田原にご縁のある方には特に、楽しんで頂けること請け合いです。

 

毎度、駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

また、お暇のおりにお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします。

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